介護手記 70代 女性

今年1月早朝電話が鳴った。
友人の娘さんからであった。母が入水自殺したかも・・と。今警察の人達が探していると・・。彼女も認知症の夫を介護していた。毎日の介護に疲れ果て、先の見えない人生に希望を失い、そこが楽園に思ったのであろうか・・・。冷たい川に身を沈めた。
同じ認知症の夫を介護する者同志、彼女の心の闇が理解でき、悲しくて、淋しくて大声で泣いた。
今まで家族で食卓を囲み、楽しく食事をして居たのに・・・。家族の会話もなく、孫子ですら寄り付かない・・・。暗く冷たい家になった。
毎日介護している自分も音を立て壊れてゆくような気がして恐ろしい!・・・。
認知症 突然夫が凶暴になり、私を適視・・。ベットより起き上がる事すら出来ずに居たのに、夜中にベットから起き上がり、鋭い目をして、「バカヤロ!」といって、私の方に迫ってきた。 突然の事で恐ろしく大声で息子を呼び助けを求めた。そんな事が毎晩のように続き、息子夫婦も寝不足となり、お互い神経がピリピリ・・・。息子も我慢が限界・・・。
『ぶっ殺してやろうか』と呟くのが聞こえた。
息子の気持ちをそこまで追い込んでしまう夫が恨めしい。母として悲しく、奈落の底に落ちる思いでした。 私も毎日トイレ、食事の世話で自分の時間がなく、心が苛立ち、自分の人生何処にいった!もういや・・。友人と同じ道を辿ろうかと思うことすらある。 又、その反面でベットの上の夫が実は一番辛い思いをしているのでは・・と思うことがある。それの繰り返しである。人生には必ず明日がある。きっと良い事もあると・・・。元気だった頃、何度も海外旅行をした。シルクロードを辿り、中東方面を何回も訪ねた。 毎日の介護に疲れたら、その時の楽しかった事を心の引き出しから、少しずつ取り出し、それを自分の餌として、これから先の長い介護に負けないでと思う。 自分よ、カンバレ!である。